運河沿いに建つ店舗併用アメリカンハウス

2021.09.28

富山市北部・住吉運河沿いの住宅街に建つ「Baked cake shop Wild Berry(ワイルドベリー)」は、Sさん(奥さま)が営むケーキと焼き菓子のお店。

「いつか自分のお店を開きたい」と夢見ていた奥さまは、ご主人と一緒に1階を店舗に、2階を住居にした念願の店舗併用住宅を完成させた。

店内は、アメリカンヴィンテージのインテリアに囲まれた落ち着いた雰囲気で、カフェ席の目の前は穏やかな運河が流れる絶好のロケーション。「この土地を見に来た時に、二人ともいい場所だなと感じたんです。街なかだけど静かで居心地がいいねって。釣り好きな主人も利賀村の自然の中で育った私も、自然と寄り添える気持ち良さに惹かれました」と笑う。偶然の出会いで見つけたこの土地で、店舗空間をメインにした家づくりがスタートした。

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憧れの“世田谷ベース”みたいなアメリカンヴィンテージ空間を造りたい

「家づくりは安い買い物ではないので、まずはいろいろな住宅会社を見に行きました。最初は、中古住宅を買うか、新築を建てるかで悩んでいて、たまたま電陽社建設さんが主宰していた中古住宅をリノベーションした家の見学ツアーに参加したんです。」

その時に、施工事例の雰囲気・デザインや家づくりについての話に好感を持ち、改めて相談をしに行ったそう。

依頼の決め手になったのは、デザインとスタッフの人柄。

色々な話をする中で、自分たちの想いを受け止めて形にしてくれそう、この人なら信頼して任せられると感じたからだ。

 

家づくりがスタートしてすぐに、Sさん夫婦が担当設計士の渋谷さんに渡したのが、所ジョージさんの『世田谷ベース』の本。

世田谷ベースと言えば、アメリカンガレージのようなかっこいい空間に、所さんの遊び心が詰まった大人の遊び場だ。

「アメ車好き、アメリカンスタイルが好きな主人は、“世田谷ベースみたいな家・店舗を造りたい、こんな感じのイメージにしてください”と言って、渋谷さんに何冊も本を渡しました。私はもっとシンプルな方が好きなんですが、お店を作るならアメリカンスタイルは絶対に譲れない!と(笑)外観はアメリカンデザインに、ガレージに停めてあるアメ車をインテリアとして見せたいなど、トータルでかっこいい空間を造りたいという主人の意見が強く反映されています」と奥さま。

そして、もうひとつお願いしたのが、「住み始めてからも、自分たちで手を加えて変えていける空間を造ってほしい」ということ。

これらの要望を受けて渋谷さんが提案したのは、アメリカンスタイル・シンプルな空間・周辺環境を生かしたデザインの3つのポイントを押さえた空間づくりだ。

「世田谷ベースのように、年月やライフスタイルに応じて完成後にも自由に作り変えていける空間、お二人の色をプラスしていける空間づくりができるよう設計しました。最初から完成形を目指すのではなくできるだけシンプルに、そして自然や木を取り込み、周辺環境の魅力を引き出す空間を造りたいと思いました」(渋谷さん)

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ソファ席からの風景。穏やかな運河を見ていると、心が洗われていきそう。

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10年経った今も、坂本さんと渋谷さんのいい関係は続いている。

家族と一緒に育てていく家づくり

完成したばかりの店舗には、雑貨が置いてある棚やキッチンのカラフルな壁、照明やカウンターもなく、今と全く違うイメージだったそう。

そこに、ファイヤーキングマグやサインプレーとなどのヴィンテージ雑貨を飾ったりと少しずつ手を加え、楽しみながらアメリカンヴィンテージの雰囲気を創り上げていった。

最初はご主人好みのインテリアに合わせていた奥さまだったが、「私の実家も物を長く大切に使い続ける家庭だったので、古いものを大事にすることには親しみがありました。それが日本の物でもアメリカの物でも同じで、年月が経つほどに価値が増し、味が深まっていく空間に魅力を感じています」。

アイアン照明や時計を取り付けたり、カウンターをアメリカンアンティーク木材で仕立ててもらったりと、店舗づくりは今もどんどんアップデートしていっている。

数年前には、ご主人が使っていたワークスペースの壁をぶち抜いて、カフェスペースを広げた。

ガレージの赤いアメ車が覗くかっこいい空間に仕上がり、男性にも人気だという。

 

「家が完成した時は、息子は小学5年生、娘は年長でしたが、今では子どもたちが“もっとこうしたらいいんじゃない?”と意見を言ってくれたり、一緒にDIYをしたりして家づくりを楽しんでいます」。

渋谷さんも、訪れる度にちょっとずつ変わっていくのを見るのが楽しみなのだとか。

「家族の成長や年月の経過に合わせて色を加えていき、ご家族みんなで楽しそうに使っていただいているのが設計者としてとても嬉しいです。家は建てた時がピークではなく、育てるもの。この家はまさに私が理想とする『家族と一緒に育む家』だと思います」。(渋谷さん)

Sさんも「もっとこうしたいというアイデアは尽きないですし、ヴィンテージの物を置いているので、時が経てば経つほどより空間に味が出てくるのが楽しみ」と話す。

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店内には、カラフルなファイヤーキングのマグカップが並ぶ。

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ご主人のワークスペースだった部屋を、カフェスペースに。

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入口の扉は、北欧の断熱扉を採用。

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アメリカンハウスには欠かせない、ベンチのあるエントランスデッキ。

自然を取り込み心地よい時間を創出

奥さまが一番好きな場所は、運河を眺めながら過ごせるソファやウッドデッキ。

借景を取り込めるよう考えられた大きな窓を開けると、水辺から心地よい風が流れ込んできてとっても気持ちがいい。

「住宅街なので、平日の日中はとても静かで、この景色を見ていると心が落ち着きます。最初から私ひとりで仕事をするつもりだったので、疲れた時にこの景色を見ているとほっと一息つけて気分転換になるんです」。

冬は鴨が、夏はボラがやってきて、自然風景に色を添えてくれるのも楽しみのひとつとか。

「この景色を見ながら長居されるお客さまも多いです。そういう方には、話しかけませんから、どうぞどうぞごゆっくりって感じです(笑)カフェを開くときに、のんびりゆっくり寛いでもらえるお店にしたいと思っていましたし、お客さまにほっと心癒されるひと時を味わってもらえたら嬉しいです」。

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運河を眺められる特等席は、店舗と住まい兼用の「キッチン」にも。ケーキ作りや料理をしながら風景を楽しめるようにと、窓の配置を考えて設計されたとっておき空間。

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空間に季節の彩りを添える借景を取り込む大開口の窓は、大きく開けられるように工夫されている。気持ちの良い日はデッキでの飲食も可能だそう。

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アメリカンデザインのガレージには、自慢の赤いアメ車を。世田谷ベースのようなワクワクするインテリアがかっこいい!

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「引っ越してきたばかりの頃はテーブルがなかったので、トレイにご飯をのせて家族みんなでウッドデッキで食事をしていました」と懐かしそうに語る。

家づくりもお店も「人とのつながり」を大切に

S邸は、今年(2021年)8月に完成10年目を迎えた。

今では理想の空間を創り上げていっているお二人だが、家づくりをしている時は、ご主人と意見の違いで衝突することも。

でもそれをちゃんと受け止めて、中立的な立場で意見や提案をしてくれた渋谷さんは、とても頼もしい存在だったそう。

「主人も、渋谷さんの言うことは素直に聞くんです(笑)それは、信頼しているからこそだと思います。今も困った時には相談に乗ってくれたり、お店に遊びに来てくれたりとずっと関係性が続いているのが嬉しいですね」と微笑む。

家づくりをしてみて、信頼している人に依頼することや、自分たちの意見をちゃんと伝えることの大切さも感じたが、何より大事だと思ったのが「人とのつながり」だという。

「家はずっと住み続けていくものだから、完成後にもずっと関係性築いていけるかどうかも会社選びの大事なポイントだと思いました。そしてこれは、家づくりだけに限ったことではないと思っています」。

 

そう感じている理由は、毎日お店を切り盛りする中で、お客さまとのつながりが何よりの楽しさだと実感しているからだ。

実は、張り切ってお店を始めたものの、オープン当初は不安も大きかったという。

ロケーションに惹かれて決めた場所だったが、住宅街の中の店舗がここまで分かりにくいとは思わず、本当にお客さまが来てくれるのか?という恐怖に襲われたこともあった。

「でも、このステキな空間で接客していると不思議と元気が出てくるんです。少しずつ常連のお客さまが増えていき、今は毎日が楽しい!これからもたくさんのお客さまとの関係性が続く、素敵なお店作りをしていきたいですね」。

ワイルドベリーに多くのお客さまが引き寄せられるのは、ゆったり寛げるお店の雰囲気はもちろん、人とのつながりを大切に想うSさんの人柄もあるからだろう。運河を望むこの場所で、これからも大切でかけがえのない時間が紡がれていくに違いない。

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完成後に自分たちで設置したお気に入りの照明たち。空間づくりを家族みんなで楽しんでいる。

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黒板メニューやヴィンテージのファイヤーキングマグが並ぶ棚も、自分たちでDIYしたもの。

Baked cake shop Wild Berry(ワイルドベリー)
所在地:富山県富山市
構造:木造(店舗併用住宅)
規模:地上2階建
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